新リース会計基準(企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」)は、2027年(令和9年)4月1日以後に開始する事業年度から強制適用されます。3月決算の会社なら2027年4月開始の事業年度(2028年3月期)が最初の対象です。
借手はオフィスや店舗の賃貸借を含むほぼすべてのリースを貸借対照表に載せることになり、損益計算書の「支払リース料」は使用権資産の減価償却費と利息費用に分解されます。ただし、借手のオンバランス化それ自体によって課税所得が変わることはありません。令和7年度税制改正で法人税法53条が新設され、税務上は引き続き支払賃借料が損金になることが条文で手当てされたためです。外形標準課税の付加価値割も同じ考え方で整理されています。
そして、上場会社などのグループに属さず会計監査人も置いていない中小企業は、そもそも強制適用の対象ではありません。ただしこの「対象外」には見落とされやすい例外があります。この記事では、自社が対象になるのか、税額と申告実務はどう変わるのかを順に整理します。
適用時期は「2027年4月1日以後に開始する事業年度」
会計基準第58項は、2027年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用すると定めています。2025年4月1日以後に開始する事業年度からの早期適用も認められているため、すでに前倒しで適用している会社もあります。
注意したいのは期首を基準に判定する点です。「2027年3月期から」という言い方は誤りで、3月決算なら2028年3月期、12月決算なら2028年12月期が最初の適用年度になります。決算期によって1年近い差が出ます。
対象は上場会社グループと会計監査人設置会社グループ
新リース会計基準は企業会計基準の一つなので、これに従う必要があるのは金融商品取引法の適用を受ける会社(上場会社など)と、会社法上の会計監査人設置会社です。国税庁も改正の解説資料で、監査対象法人以外の法人(中小企業など)は引き続き中小企業の会計に関する指針または基本要領に則った会計処理も可能である、と明記しています。
実際、中小企業の会計に関する指針は2025年9月19日の修正版でも新リース会計基準を取り込んでおらず、リース取引の定めは従来のままです。中小企業の会計に関する基本要領も、国際会計基準の影響を受けないという方針を総論に置いています。対象外の会社は、これまでどおりの会計処理を続けられます。
ただし中小企業の会計に関する指針は、適用対象から次の会社を明文で除いています。除かれる範囲は金融商品取引法の適用を受ける会社と会計監査人設置会社とで少し異なります。
| 区分 | 中小会計指針の適用 | 新リース会計基準 |
|---|---|---|
| 金融商品取引法の適用を受ける会社(上場会社など) | 対象外 | 対象 |
| 上記の子会社および関連会社 | 対象外 | 対象(資本金の規模を問わない) |
| 会計監査人設置会社(大会社・任意設置を含む) | 対象外 | 対象 |
| 上記の子会社 | 対象外 | 対象(資本金の規模を問わない) |
| 上記のいずれにも当たらない中小企業 | 適用できる | 強制適用の対象外 |
「資本金5億円未満・負債200億円未満だから関係ない」という説明を見かけますが、これは会社法の大会社の定義を裏返しただけで、子会社・関連会社の除外を反映していません。判定は資本金の額ではなく、自社が会計監査人を置いているか、そして上場会社グループや会計監査人設置会社グループに属していないか、の両方で行ってください。
会計はどう変わるのか: すべてのリースがオンバランス
借手側では、従来のファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分がなくなり、原則としてすべてのリースについて使用権資産とリース負債を計上します。契約の名称は関係なく、オフィスや店舗の不動産賃貸借契約もリースの定義に入ります。貸手側は基本的に従来の定めを踏襲しており、リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法(いわゆる第2法)が廃止された点が主な変更です。
| 従来(企業会計基準第13号) | 新基準(企業会計基準第34号) | |
|---|---|---|
| 借手のオペレーティング・リース | オフバランス(賃貸借処理) | 使用権資産・リース負債を計上 |
| 借手の費用 | 支払リース料など単一の費用 | 使用権資産の減価償却費 + リース負債に係る利息費用 |
| 貸手 | ファイナンス/オペレーティングに分類 | 基本的に従来を踏襲(第2法は廃止) |
借手のリース期間が12か月以内で購入オプションを含まない短期リースと、少額リースについては、使用権資産を計上せずリース期間にわたって費用計上する簡便的な取扱いが用意されています。少額リースの判定方法は複数あり、リース料総額300万円以下という従来の考え方を踏襲した方法や、新品時の原資産の価値が少額であるという方法などから選びます。方法によって適用の単位(リース1件ごとに選べるかどうか)が違うため、実際の運用は適用指針で確認してください。
損益計算書では、利息費用を区分表示するか注記することが求められます。一般には総資産が増えることで自己資本比率やROAは低下し、費用の一部が利息費用に振り替わることで営業利益は改善方向に働きます。ただし従来のリース料が製造原価に含まれていた場合など、表示区分は取引の性質によって変わります。費用の配分も利息法によるため、リース開始直後の期ほど費用が大きくなります。
借手のオンバランス化で課税所得は変わらない
会計基準が変わっても、法人税法上の「リース取引」の定義(法人税法64条の2第3項)は変わっていません。税務では引き続き、フルペイアウトかつ解約不能という要件を満たす取引だけが売買として扱われ、それ以外の賃貸借は賃貸借のままです。
そのうえで令和7年度税制改正により、法人税法53条が新設されました。税務上のリース取引に該当しない資産の賃借(条文上の用語は「賃貸借取引」、いわゆるオペレーティング・リース)について、契約に基づき支払うこととされている金額のうち債務が確定した部分を損金に算入するという規定です。会計でオンバランスして減価償却費と利息費用を計上しても、税務上の損金は従来どおりの支払賃借料になります。
財務省の令和7年度税制改正の解説は、この改正の趣旨を「オペレーティング・リースの性格は引き続き賃貸借であると考えられます」と述べ、会計に追随しない立場を明示しています。したがって、リースをオンバランスしたこと自体によって課税所得が動くことはなく、それを基礎とする法人住民税・法人事業税にも影響しません。
なお令和7年度改正には、所有権移転外リース取引の残価保証額の取扱いの見直しや、貸手側のリース譲渡に係る延払基準の特例の廃止も含まれています。これらは会計基準の適用有無とは別に税額へ影響しうるので、該当する取引がある場合は個別に確認が必要です。
申告調整が必要になるかどうかは、取引が税務上どちらに区分されるかと、会計上どう処理したかの組合せで決まります。
| 税務上の区分 | 会計処理 | 税務上の損金 | 申告調整 |
|---|---|---|---|
| リース取引(所有権が移転するもの) | 使用権資産を計上 | 自己所有の資産と同じ償却方法による償却費 | 償却限度額を超えれば加算 |
| リース取引(所有権移転外) | 使用権資産を計上 | リース期間定額法による償却費(利息相当額を合理的に区分した場合は、その利息をリース期間の経過に応じて損金) | 償却限度額を超えれば加算 |
| 賃貸借取引(オペレーティング・リース) | 賃借料を費用計上(新基準を適用しない場合) | 債務が確定した賃借料 | 不要 |
| 使用権資産の償却費と利息相当額を計上 | 債務が確定した賃借料(法人税法53条) | 必要 |
短期リース・少額リースの簡便処理は、税務上どちらの区分の取引にも使えます。賃貸借取引であれば、費用計上額が債務の確定した賃借料と一致する限り調整は生じません。税務上のリース取引の場合は、賃借料以外の費目で経理した金額も償却費として損金経理した金額に含めて扱われますが、償却限度額(所有権移転外ならリース期間定額法、所有権が移転するものなら自己所有の資産と同じ償却方法によるもの)との比較は必要です。リース料が期間ごとに不均等な契約では調整が生じることがあります。
財務省の解説も、新基準を適用する必要がない中小企業や適用を開始していない法人は特段の申告調整を要しないとしたうえで、新基準を適用する法人が賃貸借取引に係る費用について使用権資産の償却費および利息相当額として計上している場合には、その費用計上額を否認しつつ法人税法53条による損金算入額を認容する申告調整が必要になる、と整理しています。費用の総額はおおむね一致しますが、会計は利息法で初期に大きく配分するため、期ごとのズレを別表で管理する作業が発生します。
なお、会計上の使用権資産は法人税法上の減価償却資産にも繰延資産にも該当しません。ただし税務上のリース取引に係る使用権資産の償却費は、税法上のリース資産の償却費に該当するものとして扱われます。会計上の使用権資産と税法上のリース資産は別概念である点は、実務で混同しやすいところです。
外形標準課税の付加価値割にも影響しない
外形標準課税の付加価値割は、報酬給与額・純支払利子・純支払賃借料と単年度損益で計算します。リース料が会計上どの科目に振り替わるかで課税標準が動くのではないか、という懸念がありますが、結論として動きません。
地方税法72条の17第1項は、支払賃借料を「当該事業年度の法人税の所得の計算上損金の額に算入されるもの」と定めています。オペレーティング・リースは法人税法53条により従来どおり支払賃借料が損金になるので、付加価値割に取り込まれる金額も従来どおりです。会計上計上した使用権資産の減価償却費は法人税の損金ではないため、純支払賃借料には入りません。
税務上の賃貸借取引に係るリース負債の支払利息についても、地方税法施行令20条の2の5第2号で純支払利子から除くことが明記されました。あわせて同法72条の17第2項では、税務上のリース取引に係る賃借権が支払賃借料の対象から明文で除外されています。いずれも2025年4月1日施行です。
財務省の解説は、各事業年度の支払賃借料は会計上の取扱いによるのではなく税務上損金の額に算入される金額と一致するよう規定の整備を行った、と説明しています。税務上の所得計算が変わらない以上、本シミュレータの計算ロジックも新リース会計基準の影響を受けません。
使用権資産は償却資産税の対象にならない
固定資産税(償却資産)の対象となる償却資産は、地方税法341条4号で「その減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上損金又は必要な経費に算入されるもの」と定義されています。会計上の使用権資産そのものは法人税法上の減価償却資産ではないため、オンバランスしたからといって新たな償却資産が生まれるわけではない、と整理されます。
誰が申告するかは、従来どおり資産の所有関係で決まります。一般的な所有権移転外リースでは物件の所有権が貸手にあるため、借手が使用権資産を計上しても申告するのは貸手です。一方、所有権が借手に移転するリースでは、原則として借手が申告することになります。所有権留保付きの売買に相当する取引は、地方税法342条3項が売主・買主の共有物とみなしており、両者が税額の全額について連帯して納付する義務を負ったうえで、実務上は原則として買主が申告する取扱いです。判断に迷う契約は、資産の所在する自治体が公表している償却資産申告の手引で確認してください。
中小企業でも無関係とは限らない3つのケース
強制適用の対象外であっても、次の場合は準備が必要です。
1つ目は、金融商品取引法の適用を受ける会社の子会社・関連会社、または会計監査人設置会社の子会社である場合です。中小企業の会計に関する指針の適用対象から明文で除かれているため、単体の計算書類でも使用権資産とリース負債の計上が必要になります。
2つ目は、上場会社の連結子会社である場合です。単体の適用有無にかかわらず、親会社の連結決算のために、リース契約ごとのリース期間・リース料・割引率といった情報を連結パッケージで求められます。契約書の棚卸しは実質的に避けられません。
3つ目は、将来的に上場や会計監査人の設置、M&Aを見込んでいる場合です。過去の契約まで遡って情報を整備する必要が出てくるため、早い段階でリース契約の一覧を作っておくと負担が軽くなります。
いずれにも当たらない会社は、従来どおりの会計処理を継続できます。オンバランス化に伴う課税所得の変動もありません。ただし前述の残価保証額の見直しや貸手側の延払基準の廃止は、会計基準を適用するかどうかとは関係なく及ぶ改正なので、該当する取引があれば別途確認してください。
出典
企業会計基準委員会 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等の公表・国税庁 令和7年度 法人税関係法令の改正の概要・財務省 令和7年度 税制改正の解説(法人税法の改正)・財務省 令和7年度 税制改正の解説(地方税法等の改正)・日本税理士会連合会 中小企業の会計に関する指針・基本要領・e-Gov 地方税法。会計基準の適用判断・申告実務は公表資料および顧問税理士・監査人にご確認ください。